戦慄の深夜残業これは、コンピュータ関係の某メーカー開発センター内でのお話です。 それは、今からちょうど一年ほど前の6月のことでした。 (課長もダメ出しばかりしていないで、何かアイディア出せよなー) どんなアイディアを出しても、よく聞きもしないで却下し続ける課長にイライラしつつ、時計に目をやると、ちょうど0時を回ったところでした。 (今日も徹夜かぁ・・・・・・。ん?) その時、モニターに目を落としかけた彼の視線の端を、黒っぽい影が横切った様な気がして、フト顔を上げました。 (気のせいか・・・。疲れたまってるしなぁ〜) 首をクキクキと左右に動かした後再びモニターに目を落とした彼は、そのままの姿勢で凍りつきました。 それは、明らかに人間の気配の『それ』とは違っていました。 (ど、どうしよう・・・・・・) そうこうしているうちにも、『それ』は着実に彼に近づいてくるようでした。 (来るな、来るな、来るなーッ!!) 彼は叫びだしたい気持ちで、ぎゅっと目をつぶりました。 (!?) 『それ』は彼のすぐ後ろをすり抜け、次の瞬間、 「うわあッ!!!!」 課長が大きな悲鳴をあげ、椅子からひっくり返ったのです。 何と、体長5cmはあろうかという巨大なゴキブリが、佐藤の右肩にへばりついていたのです!! 言葉を失い呆然とする彼に、中村さんが言いました。 「さ、終電、終電」 後ろも見ずに去ってゆく中村さんの後を、彼はパソコンの電源を落として慌てて追いかけていきました。 「天誅」 その後、課長が正門に姿を現す事はなかったそうです・・・。 次号は6月15日に公開予定です。 |
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